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恩師の想い出(終章)「研究と価値観」

 私の恩師は、学生には直接説明することはないのですが、研究と設計など実践はセットだと考えています。研究活動で得られた成果は、現実の地域施設の計画・設計に反映させることが目的の一つ、また自治体などの施設計画への具体的な提言・モデルの背景となる資料です。

 ですから、趣味的な研究のための研究ではないということです。世の中には住宅のデザインや暮らし方を学術的な興味から研究を続けている大学などの先生が沢山います。
 もちろん、それらを否定するつもりは今はありませんが、当時の私は、社会的に寄与しない研究は余り意味のない研究であると公言していました(笑)。

 恩師からは、「貴方は基本的に、貴方を批判した教授と考え方が良く似ている(笑)。だから、口論になったとも言える。」と指摘されました。

 結局、私も名物教授と同じようなことを言っている部分が多く、周りの助手からも、言っていること同じじゃないの?と言われ、思わず我に帰りました(笑)。学術的な価値を重んじているという点も私は同様でした。
 ただ、卒論では、現場から学び、社会的な制度やお上(かみ)の開発に、批判的な態度で向き合ったため、理論武装も自分に有利な材料を沢山集めることに力を注いだのでした。
 今から思うと、冷や汗が出るような論文の文章です(笑)。こんな人物が、会社で旧建設省、公団、都府県・市町村の街づくり、住宅地計画や都市整備のコンサルティング業務を約20年間やっていたわけですから。矛盾のなかに生きていたんです。

 回想の続きです。恩師の研究室に残って2年間研究したことは、千代田区・神田地区の土地利用の変遷と将来の市街地環境整備の可能性に関する基礎研究でした。

 大学院生ではなく、働きながらの研究員でしたが、2年間在籍したということで、2年目の12月には、大学院生の研究発表会で一緒に研究の概要を発表することになりました。指導教授陣の筆頭は、あの教授でした(笑)。
 私の研究発表が終わったあとで、全体の講評や個別の質問・感想などが教授陣からいくつかありました。実に静かな雰囲気の中で淡々と行われました。

 あの教授からは、「君は大規模再開発は嫌いなようだが、君の研究結果からみると、神田地区は、条件がそろえば、一挙に再開発が進む可能性を示していますね?今後、どのような分析を続けるかでも結論が変わりますかね。」とコメントされました。

 私は「ご指摘ありがとうございます。先生の御意見と同様です。私もそう思います。建築基準法の86条の特例規定を適用すると、共同建替えも出てくると思いますし、将来の可能性検討は今後の研究課題にさせてください。」と答えました。先生はうなづいて居られ、表情もとてもにこやかで、少し拍子抜けしました(笑)。このかたは、真面目に学問に取り組む学生には好意的なんだなと思いました。

 恩師からは、「おまえも、大分おとなになったな(笑)」とからかわれました。しかし、残念なことに、上記の研究テーマは続けることはできませんでした。
 民間の都市計画・建築事務所に就職してから、仕事に追われ、研究すら忘れてしまったのです。

 ですが、会社を辞めて、独立開業するに当たり、恩師のように独自の着眼点やオリジナリティを大切にすることを想い出し、試行錯誤や実践的研究を続けました。
 答えは現場にあり、自分の経験の中にある。
(終わり)
by neo-diy | 2014-03-05 08:58 | 仕事の回想・自分史 | Comments(0)

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